集落の人たちの暮らしを第1に考えて設立された共同売店
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株式会社 大宮産業
〒787-1615
高知県四万十市西土佐大宮1576
電話 0880-53-2100

「大宮米」のブランド化を図り、販路を拡大

 集落の人たちによって開かれ、支えられてきた大宮産業。当初の「赤字になったら……」という心配は杞憂となり、初年度から黒字経営となっている。売り上げも3600万円、5600万円、6300万円、6500万円と順調に伸ばしているのだ。売り上げの約60%は燃料費だが、次に多いのが、じつは地元産のお米。寒暖の差が大きい大宮地区でつくられるお米は食味がよく、「このあたりの地域では知る人ぞ知る良質米なんです」と自信を持って語る竹葉さんも、約2haの田んぼでお米をつくっている。

 「この地区ではすべて低農薬栽培ですから、安心安全もウリですね。ですから、大宮産業が立ち上がってからは、大宮米≠ニいうブランドで積極的に販売しています」。

 現在の大口の販売先は学校給食である。高知市内の中学校と高校、四万十市内の小学校と計3校に大宮米を卸しており、四万十市内の病院でも大宮米を使いたいという話があるそうだ。竹葉さんの言葉を借りれば、「地産地消」から「地産外消」である。

 「農業は大宮地区の基幹産業です。農業が行き詰まれば、集落の経済も成り立たない。農業収入を上げていく、その基盤をつくるためにも、お米の販路を増やしていきたいですね」

 大宮米の販路拡大と同時に、今後力を入れていきたいのは露地栽培での野菜。とくに学校給食から根菜類の野菜も欲しいという要望があり、徐々にでも作付けを増やしていきたいという。その一部は、すでに大宮産業の店舗でも販売。生産者それぞれが袋詰めし、価格を決め、売り上げの10%を店側にバックするという仕組みだ。岡山さんによると、多い日には十数種類の野菜が並ぶそうだ。

 農家の高齢化は大宮地区でも深刻な問題である。昭和40年代には600人を超えていた人口も減少の一途をたどり、大宮小中学校も来年度には統廃合されることが決定された。農業の後継者を育てていきたい、大宮産業設立の背景には、そんな切なる願いも込められており、唯一の社員である矢間さんは、若手のなかでは期待の星。大宮産業で働きながら、実家の農業を引き継いでいる。

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店舗の裏手にある倉庫には堆肥や肥料、苗などが山と積まれていた。倉庫には精米機もあり、「大宮米」を出荷する際は、ここで精米を行う

集落の店は集落のみんなで守っていく

 大宮産業の常連さんは大宮地区の人たちだけではない。周辺の地区の人たちも頻繁に訪れており、この店舗は頼もしい存在なのだ。多くは給油での利用だが、ついでに買い物もしていってくれる。隣の薮ヶ市(やぶがいち)地区から来たという女性も給油がてら子どもたちのおやつをお買い上げ。

 「この周辺で給油できるのはここだけですから、よく利用させてもらっています。このお店がなくなったら、正直、困りますね」。

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隣の薮が市地区に暮らす常連さん。給油のついでに買い物をしていく

 大宮地区をはじめ、周辺の人たちにとっても今ではなくてならない店となっているが、日常の買い物がすべてここでクリアできるわけではない。先にも記したように、生鮮食料品はお豆腐以外には扱っていないし、販売されている商品の多くは、市街地にある量販店やディスカウントストアに比べると価格は高い。勤めに出ている若い世代の人たちは、仕事の行き帰りに市街地で当然のことながら買い物をしてくる。

 「でもね、大宮産業は私たちのお店なんだっていう意識はちゃんとあるんですよ。だから別の店で買い物をしても、価格に関係なく、これは大宮産業で買おうと、どこかで線引きしていますね」。

 という岡山さんも、市街地の店と大宮産業とを上手に利用しているひとりだ。できるだけ安く買いたい、手に入れたいと思う心理は誰もが持っている。大宮の人たちも、もちろん同じはずだが、貨幣というものさしだけを当てていては大切なものを見失うと諒解してもいるのだろう。市場経済に翻弄されながれも、集落の店は、集落のみんなで守っていく。その想いに揺るぎはない。