地産地消レポート 地元、食べてます記事一覧

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山形県小国町 小玉川・樽口・伊佐領集落

山の恵みを生かした観光ワラビ園は「コミュニティの源」

集落の山を「観光ワラビ園」に、「山菜の学校」に

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問い合わせ先
泡の湯温泉「三好荘」
〒999-1522 
山形県西置賜郡小国町大字小玉川715
電話0238-64-2220
FAX0238-64-2221
http://www.awanoyu.com/


現代農業2006年8月号増刊
「山・川・海の「遊び仕事」」より

田舎の本屋さんで購入する
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「おぐに山菜の学校」の一風景から

 「それじゃ、ここからは、目を"山菜モード"に切り替えてくださーい!」

 第四回「おぐに山菜の学校」のスタッフの一人、斉藤弥輔さん(53歳)は、こう言うと、先頭を切って、ワラビ園へと向かっていった。

 「昨日、ひさしぶりに雨が降ったから、きっと水分を含んだ柔らかいワラビが採れますよ」

 参加者たちに向かってそんな話をしながらも、すでに目は、草むらにニョキニョキ生えたワラビを追い、次から次へと摘んでいる。

 「目の前のワラビを採る前に、次に採るワラビを見つけておくことがコツ。ほら、こんなふうに、ね」

 日常的に山菜採りを楽しんでいるとは聞いてはいたが、さすがに仕事が早い。おまけに、「山菜の王様」と称される貴重なシオデまでも目ざとく見つけ、一緒に摘んでいるではないか。

 斉藤さんの達人ぶりに感心していると、背後から、その晩に宿泊予定の「泡の湯温泉・三好荘」のご主人、舟山鐵四郎じいちゃん(81歳)の声が聞こえてきた。

 「ケツ追いはだめだっ!」

 つまり、人の後についていても、いいワラビは残っていないから、横一列になって採れ、という意味らしい(言われてみれば、たしかにそうだ)。

 そんなアドバイスを受けるうち、しだいに目が慣れてきたのか、ほいほいワラビが採れるようになってきた。こうなってくると、ワラビ採り競争をしているみたいで楽しい。

 「あった!」

 「ここにも!」

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飯豊連峰を望む小玉川の観光ワラビ園。広さは50ヘクタール。

 参加者たちの弾んだ声が聞こえてきた。ワラビを求めて、奥へ、さらに奥へ……。はっと気づくと、みんな、ひろーいワラビ園のあちこちに散り散りになっていた。引率役であるはずの斉藤さんなどは、いったいどこへ消えたやら。かなりの傾斜のところで黙々と採っている人もいる。

 そんなこんなで1時間余り。集合場所で、収穫したワラビやシオデ、ウルイ、フキなどを互いに披露しながら休んでいると、「初めて山菜採りを体験した」という女性が、山から降りてきて、腰かごに入ったワラビを見せながら言った。

 「夢中になって採っていたら、一瞬、自分がどこにいるかわからなくなっちゃった。山菜採りをしていて、山で迷子になる人の気持ちがわかるわぁ」

 その場にいた一同、深くうなずいた。

山の恵みを生かした地域活性化イベント・「おぐに山菜の学校」

 「おぐに山菜の学校」は、山形県小国町の町おこしグループ「ここ掘れ和ん話ん探検隊」が、地域の大切な資源である山菜を生かし、町を活性化させようと四年前に始めた1泊2日のイベントだ。

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体験内容は盛りだくさん。まずはアク抜き方法実習。重曹を使ってアクを抜く。

 山菜の採り方・マナーの講義に始まり、ワラビ採り、アク抜き実習、スライドによる小国の景勝地紹介、きのこの菌打ち体験、山菜料理実習やトレッキングなど、小国の自然や食文化が学べるプログラムが組まれている。晩には温泉につかり、山ほどの山菜料理とお酒をたんまりいただきながら、地元の人たちとの交流を楽しむ。そんな中身の濃い内容になっている。

 参加費用は、自分で採ったワラビとナメコのホダ木のおみやげが付いて、16,000円。今年は、5月終わりから6月の半ばにかけ、会場を変えて3度開催したが、東北近県はもちろん、茨城、埼玉、神奈川県などから、合計55名が参加した。

 私が参加した6月4、5日の開催場所は、町の最南端で、飯豊山の麓に位置する小玉川地区。真正面に残雪の飯豊山を眺めつつ、まばゆい新緑に囲まれたワラビ園でワラビを採り、おいしい空気を吸い、おいしい料理を食べて、温泉につかって、よく笑って……。それは幸せいっぱいの2日間だった。

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山菜調理実習では笹ちまきの作り方を。おやつのような感覚で昔からよく食べられていた。葉っぱが大きくなり始める6月〜秋ごろまでが旬。

 山菜の宝庫・小国町には、現在、11カ所の観光ワラビ園がある。毎年5月中・下旬から約ひと月半にわたり、週2、3回オープンしており(開園時間はたいてい午前中の2、3時間)、入園料は2,000円程度で採り放題。味噌汁のサービスや飲物、山菜、焼きイワナなどの販売もあり、シーズン中に1万人余りの観光客が訪れるほどの人気ぶりだ。

 だが、ほとんどの人はワラビを採ると、まっすぐ帰ってしまうという。しかも、直売所などでは、1kg700円ほどで販売されているのに、10kg以上採っていく人もいるような状態だ。そこで、「もっと"観光ワラビ園"を有効に生かそう」「付加価値をつけて提供しよう」と、「おぐに山菜の学校」を企画した。山菜を学び、味わい、遊ぶ。地域の人たちと語り合い、雪深い山村の文化やそこで生きる人たちの暮らしぶりを見てもらう。「小国町をもっと好きになってもらいたい」「町をもっと元気にしたい」――そんな思いが込められたイベントなのである。