わたしの「地元を食べる」記事一覧

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朝田 くに子
(あさだ・くにこ)

NPOローカル・ジャンクション21代表
1955年兵庫県出身
経団連(現・日本経済団体連合会)事務局広報部を経て、2002年3月より、次世代によりよい自然と生活環境を残したいと取り組んでいる各地の団体・個人のネットワーク、NPOローカル・ジャンクション21を設立。各地のスローフード、スローライフによる人とモノの出会いの場「風土倶楽部」を企画運営。現在、各地の地域づくりのサポート、食や環境をテーマにしたイベントや出版などの企画立案・編集などを行っている。

地産地消は 人間らしい営みを取り戻す基礎づくり

朝田 くに子さん NPOローカル・ジャンクション21代表

人任せの食がもたらす不安

  都会は今、不安だらけです。食の不安、災害の不安、お金の不安…中でも、食の不安はつくることをすべて人にゆだねてしまったことが原因です。経済成長とともに都市に労働力が吸い寄せられて、今では国民の80%近くが都市に住むといわれています。すなわちほとんどが消費するだけです。つくる側は、いつでも、どこでも、いくらでも、そしてできるだけ安くという消費者ニーズなるものに応えるために、安い価格の輸入農産物と闘いながら、農薬や化学肥料を多用しなければ成り立たない工業生産のような農業を強いられてきました。こうした大量生産・消費の流れの中で、生産と消費の距離が広がるにつれて流通経路が複雑になり、互いの存在が見えなくなりました。誰のためにつくっているのか、誰がつくってくれているのかわからなくなって、互いを思いやることも、信頼することもできなくなり、安全な食べ物を得るために認証制度やトレーサビリティといったシステムが必要になってしまいました。

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 一方、農業就業者数は年々減っており、平成18年度は約323万人(参考:平成18年度農林業センサス)、漁業就業者数はわずか24万人(参考:平成16年度農林水産統計)です。人口全体のほんの3%ほどが自給率40%を支えているのが現状です。そのうえ、農業従事者の67%が60歳以上という超高齢化が進んでおり、耕作放棄地が年々増え続けています。いまや食の安心を得る前に、食糧をどう確保するのかが大きな課題となりつつあります。

あたり前の食を取り戻すとき

 仕事で地方によく出かけますが、その土地のものをいただくのが何よりの楽しみです。 地元の女性の方たちによる手料理は一番のご馳走です。旬の新鮮な食材が余すところなく使われていて、料理の腕前にいつも感心しつつ、 家族の健康のために日々、創り続けてきた料理の中に地域の素顔が垣間見えてきます。気候や地形により植生や生き物たちが育まれ、そこに暮らす人々によって食文化や生活技術が培われていく、それこそが地域の豊かな個性です。ただ、最近では地方も都市化の波で、自然や人とのつながりが薄れてきて、連綿と伝えられてきた文化や暮らし方は急速に失われつつあります。同時に食の崩壊が進み、食育が各地で熱心に取り組まれるようになってきました。

 食べものが生まれる生産の現場とともにある地域では、直売所などをきっかけに地元の食材が急速に見直されています。つくる側と食べる側が直接顔を合わせ、本当につくりたかったもの、欲しかったものが互いにわかりはじめたのです。日々の食卓に必要なものは、幻の逸品ではなく、自然の速度に合わせてつくられた新鮮で安心安全なもの、すなわちあたり前のものでした。

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各地で取り組みが進む食の文化祭の風景。

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新潟県十日町市にて。食べ物を前にすれば、話が弾みます。


 山積する食の課題も、食糧の問題も、足元の大地の恵みとしっかりとつながることからしか、解決することはできません。地産地消とは、人と人、人と自然、人と地域のつながりを結びなおし、人間らしい営みを取り戻す基礎づくりなのです。あなたの食卓は、地域や自然環境を変えていく力を持っています。

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2006年から代々木公園で月1回開催されている「東京朝市」

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おいしいものは手から手へ 都内団地にて産直市を実施


 だからこそ、生産の現場と離れた都市に暮らす私たちは、どんなものをどんなふうに食べ、誰と、何とつながり、食の風景を変えていくのか、今こそ、しっかり考えて行動していきたいものです。そこで、私たちは、昨年から月1回代々木公園で開催されている「東京朝市」を、大消費地東京でつくる側と食べる側が直接出会う場として、首都圏のNPOと連携しながら一層内容を充実させていく予定です。自給率1%の東京の地産地消は、各地のがんばる農業、がんばってきた農業を応援することから始めたいと思います。